恋愛が絡んだ妄想の話

私の周りの女子は、よく妄想にふけていると思う。

高校の時からみんな嵐と付き合っていたし、大学になった今も、少女漫画の主人公のごとく妄想を発揮させる友人もいるくらいである。

私はその手の妄想が非常に得意でない。自分がディズニープリンセスになったらどんなストーリーにしようとか、子供が出来たらどんな風に育てようとかの妄想はよくするが、恋愛が絡むと、なかなか話が進まないのである。

そんな中、この前とある友人に、妄想の楽しさについて熱弁された。彼女がする妄想は、恋愛が絡んだものではなく、中学生の自分がめちゃくちゃ運動神経が良いという妄想をするようだった。

妄想の中の彼女は、バスケやテニスなどすべてにおいてスポーツ万能で、いろんな部活から引っ張りだこなのだが、部活は興味がないので断っているとのことだった。彼女いわく、運動神経がめちゃくちゃ良いことに加え、周りからのスカウトを断り続けているというのが一番のポイントらしい。

なかなか面白い妄想だなと思ったが、個人的な感想としては、終わってしまった中学生時代を妄想するのは、少し悲しい気もする。中学生時代は、これから訪れることは絶対にないからだ。来るはずもない中学生の自分を妄想しても、実際はスカウトを断り続けるどころか、運動神経のカケラすらないという現実であれば、虚しさだけ残るのではないだろうか。

そう訴えてみたが、彼女はそれで自信がつくようだった。続けて、私にもその妄想をやってほしいと言われた。

終わってしまった高校時代の妄想はなかなか難しかったが、私には高校時代にしたくても出来なかった唯一の後悔があった。それは、先輩と制服デートをすることである。

私の高校は厳格な女子校だったこともあり、異性との交際は絶対に認められない学校だった。しかし、そんな言い訳をしなくても、芋臭い私には出来なかっただろう。彼氏が出来なかったことを高校のせいにするなと言いたい。

そんなわけで、憧れの先輩と制服デートができたなら、という妄想にふけることにした。しかし、恋愛が絡むと、妄想のハードルは一気に高くなる。私と先輩の運命はどうなってしまうのだろうか。自分でヒヤヒヤしながら妄想してみた。

高校一年生の私は、数日前にとある先輩と出会った。出会ったと言っても、友人が所属する部活の、1個上の先輩である。友人と廊下で話していると、その先輩がやってきて友人に話しかけたついでに、私とも少し話したというレベルの出会いだ。ちなみに先輩は、顔がポルノグラフィティ岡野昭仁みたいな塩顔のイケメンで、私のタイプだったのでかっこいいなと思った。

しかし、あんなカッコいい先輩が、私みたいな芋に声をかけるなんてことはないだろうと分かりきっていたので、あの先輩に一瞬ときめいてしまったことは忘れようとした。

そんなある日、私が一人で帰ろうとしていると、なんと下駄箱のところにあの先輩がいた。先輩と目が合い、思わず「あっ!」と言ってしまった。

先輩は、「こないだ話した子だよね!」と言ってきた。なんと、パッとしない地味な私のことを覚えてくれていたのだ。とても嬉しい気持ちになっていると、先輩は続けて「一緒に帰らない?」と言ってきた。

有頂天とはこのことである。断る理由などない。私は岡野似の先輩と一緒に帰ることにした。

しかし、帰り道のイメージがなかなか湧かない。先輩と何を話すかも分からないし、とりあえず先輩が自転車を押しながら、私と話していることだけは妄想できる。そこまでが限界である。

肝心な帰り道デートが妄想できないまま、先輩は「アイス買ってあげるよ」と、近くのファミマでアイスを買ってくれたので、2人でアイスを食べて終わった。

本当につまらない妄想である。制服でデートしたかったのに、これでは制服を着ているのかどうかすら分からない。なれそめや顔は良い感じだったのに、デートにありつけた瞬間に、その先がどうでも良くなってしまった辺り、釣った魚に餌をやらない彼氏みたいだなと思った。

やはり、私は恋愛でキャピキャピした恋愛よりも、ディズニープリンセスになって歌って踊っている方がよっぽど幸せなのだ。なかなか共感してもらえないが、脳内では立派なディズニープリンセスであることが、私の強みでもあると言いたい。