心の内を聞いてほしい話

人生は仕事だと思う。

なぜそう思うかというと、仕事をして、金を稼がなくては生きていけないからだ。

仕事をして、金を貰って、その金で命を紡ぐことが、人生そのものだと思っていたのである。

だから、人は恋愛はしなくても生きていけるが、仕事が無ければ生きていけないと思って過ごしてきた。

 

ある日、ツレが「将来、俺は映画監督になりたい。だから今通っている大学を辞めて、映像系の専門学校に行こうと思う。」と言ってきた。

私の人生設計図では、来年無事に国家試験に合格すれば、名古屋へ行って薬剤師として働き始めたと同時に、私について行くと言って聞かないツレが名古屋で就活をし、無事名古屋での就職が決まり、1年後に同棲、そのまま名古屋で余生を過ごす、くらいに考えていた。

しかし、映像系の専門学校へ行くともなれば、話は変わってくる。ツレが行きたいと言っている専門学校は東京らしく、しかも東京に行って映像の勉強をし、学校を卒業したら、そのままハリウッドに行って映画を作りたいというのだ。しまいには、ハリウッドに私を連れて行きたいとまで言い出した。

正直言ってめちゃくちゃである。私は私立の薬学部へ6年通い、親に1200万円以上の学費を払ってもらっている身分だ。この年月と大金が、彼のよくわからないハリウッドによっておじゃんになるかも知れないなんて、誰がついて行くかという感じである。人よりちょっと映画を観てきたからと言って、1年か2年映像を学び、ハリウッドへ行って映画を作って映画監督としてほいほいデビュー出来ると思ったら大間違いである。

そんな食っていけるかどうか分からないようなハリウッドについて行くくらいなら、こっちは薬剤師として、1人で食っていけるだけの金を稼ぐ予定なのだから、日本で大人しく薬剤師やっとりますよと思った。

 

ここで、最初に述べた私の名言が登場する。人は恋愛をしなくても生きていけるが、仕事をしなければ生きていけないという名言である。

私としては、ツレが安定した職業に就いて、私と名古屋でのほほんと暮らすのが理想であるのは言うまでもない。しかし、彼には映画監督という夢があると知ってしまった以上、私は彼を応援しなければならないと思った。

 

私はハリウッドについて行く気がないので、私と一緒にいるのであれば、ハリウッドでの映画監督という夢は諦めてもらわなければならない。しかし、世界は広い。ツレの夢を応援し、ハリウッドに行ってでもツレと一緒にいたいという女性が現れる可能性だってある。

彼がハリウッドドリームを追いかける人生を歩むとするなら、その人生のパートナーは私ではないと思った。恋愛対象なんてこの世の中いくらでもいるが、ツレの人生の中で、ハリウッドで映画を作るという夢を叶えるのは、ツレ本人しかいないのだ。

私が、普通のサラリーマンとして名古屋で働いて欲しいという自分の願望を述べれば、彼は本当にサラリーマンになり、私のせいでハリウッドドリームを諦めてしまうかもしれない。好きだからこそ、彼の1度きりの人生の邪魔だけはしたくなかった。

 

あなたがその夢を追いかけるなら、それぞれ自分の人生を歩んだ方がいいのではないか、ということをツレに伝えたところ、なぜか怒られた。「なぜ今の時点で、これ以上一緒にいるのが無理だと決めつけるのか」と言われたのだ。

結婚しても、私が日本で薬剤師をし、ツレがハリウッドで映画を作って、離れてもお互いしたいことをやればいいんじゃないかと言われるだろうが、私達は今まで散々遠距離をしてきたので、これ以上離れて暮らしたくないという意見だけは、2人とも一致しているのである。

 

更に問題は、私は女性である。結婚に適齢期は無いが、出産には適齢期があるのだ。

男性には分からない感覚かもしれないが、健康上、20代で1人は産んでおきたいと思っているので、逆算するともうあと2年くらいで結婚しなければならない。もし今ツレと別れることになるのであれば、私は結婚相手をあと2年以内に探し出して、その人と付き合ってさっさと結婚にもっていかなければならないのだ。別れるならさっさと別れて次にいきたいし、別れないならこのまま結婚までしてしまいたい。

という、今考えてもどうしようもない悩みに突入しているところなのである。

しかし、ここ2、3日で、考え方が変わる出来事が起こったので、また後日記すことにする。