心の内を聞いてほしい話 その2

ツレとの将来で悩んでいた矢先、ツレの母様と会うことになった。

私はツレの母親と非常に仲がよい。頻繁にLINEをするし電話もする。ツレは留学中でいないが、母親に会いたくなったので、私1人で母親に会いに行ったのである。

母様がフェリー乗り場まで迎えにきて下さり、そのまま2人でドライブをしたり、博物館に行ったり、個人が作ったよく分からない不気味な銅像を見に行ったりして、観光を楽しんだ。

 

お昼ご飯を食べていた時に、ツレの将来の話が出た。

私ちゃんはどう思う?と母様に聞かれ、私は正直にツレに対して思っていることを言った。私にとって人生とは仕事であり、恋愛はしなくてもいいので、映画監督を目指すなら相手は私ではないという趣旨の主張をした。母様はずっと頷いて話を聞いて下さった。

その後も2人で土砂降りの雨の中、ドライブをしながら観光したわけなのだが、その帰り道、私が

お母さんが、今の人と結婚を決めた理由は何かと尋ねた。

 

母様は言った。

今の旦那と付き合って2ヶ月の時に、俺の実家に来て欲しいと言われ、一緒に行ったところ、旦那と旦那の親と、台風の中野外ライブへ連れて行かれた。その野外ライブが夜中の3時まであったのだが、誰一人帰ろうとせず、3時まで大雨の中、パンツまでびしょびしょになりながらも4人でライブを楽しんだ。

私の父は仕事一筋で、お金には困らなかったけど家族に全然構ってくれなかった。そんなんだったから、今は母とも別居をし、家族がバラバラになった。私は家族というものを知らなかったけど、旦那の家族が雨の中野外ライブではしゃぎ回っているのを見て、この人とは裕福な暮らしは出来ないかもしれないけど、一緒にいて楽しい人生が送れるだろうな、と思った。

とおっしゃったのだ。

続けてこう言った。

私ちゃんは、恋愛は出来なくても仕事さえあれば生きていけるって言ったけど、恋愛ができないと、家族が出来ないと人間って生きていけないよ。私の父は、仕事のせいで今独りぼっちで本当に寂しそうにしているからね。仕事は60歳までするものであって、一生するものではないよ。今のツレと私ちゃんみたいな、本気で好きになる人って、そう簡単に出来ないと思うけどな、と。

 

以前、私のじいちゃんがこんなことを言っていた。じいちゃんは、おばあちゃんのことが大好きで仕方なくて、自分が退職して子供達が独立したら、おばあちゃんと色々な所へ旅行に行くのを楽しみにしていた。そしてようやく退職できた矢先、おばあちゃんはガンですぐに亡くなった。おばあちゃんと旅行に行くことを楽しみに生きてきたのに、もう生きる意味がない。

 

ふと、仕事とは何故するのだろうか、と思った。生きるためだと思っていたけど、では生きるとは何なのか。

1人でばりばり働いて1人で美味しいご飯を食べて1人で好きな洋服を買ってオシャレすることが幸せなのか。

違う気がする。働いた金で、好きな人と美味しいものを食べて、美味しいねと言い、好きな人に見てもらいたくて、お洒落な服を着る。好きな人や家族と楽しく過ごすために金を稼ぐのではないだろうか。

ただ金を稼げばいいってもんじゃない。仕事こそ、この世の中いくらでもあるけれど、愛する人や一緒にいたいと思えるあの人はこの世でたった1人だ。

 

人生は仕事だと思っていた。

けれど多分、好きな人と結婚し、子供を産んで家庭を作り、子供に勉強をさせて、適度に家族旅行に行き、家族で美味しいものを食べ、好きな洋服を着てオシャレをする。

これが幸せだとするなら、幸せになるために金を稼ぐのであって、仕事とは、あくまでもこの幸せを掴むための手段に過ぎないのかもしれない。

 

人生についてえらく大口を叩く私だが、まだ23歳の社会にも出ていない学生である。社会に出ることが幸せなのか、家庭を作ることが幸せなのかなんてまだ分からないし、なんなら幸せというものすら何か分からないようなちっぽけな人間である。

だからこそ、人生とは何かを考える時期であり、これからたくさん迷うことだろう。仕事か恋愛か、どちらを取るかどちらも取るかは分からないが、何が起こるか分からないこそ人生だと言いたい。