ちょっとしたホラーな体験の話

8月も終わりだというのに今年の私は夏らしいことを何一つしていない。

 

唯一の夏らしい事と言ってもLINEで花火と打って出てきた花火を眺め、電車の中から海を眺め、スーパーで買ってきた半額のスイカを食べて過ごすという有様である。

せめてホラー映画の一つでも観れば良いのだが、私はおばけがめちゃくちゃ苦手だ。

実際に見たことは無いがおばけの存在は信じているし、霊感というのは20代半ばで発症することもあるらしいので、むしろそろそろ心構えなければならないと思っている。

今のところ全く霊感の無い私だが、以前霊感の強い後輩と話す機会があった。

 

後輩との出会いはツレの部屋である。

一人暮らしをするツレの家へ行くとその後輩がいた。簡単に言うと私は彼とその日が初対面だったのだが、私とツレが所属する同じ部活の部員らしく、一応後輩にあたるので後輩と呼ぼう。

対面して早々、彼に霊感があることを知った。

以前ツレが部屋で寝ていると突然金縛りにあい、ふとベットの横を見ると、女の人と子供が座っていたと話してきたことがあった。そしてその日後輩は、部屋に入って来るなり、この部屋には女の人と子供の霊がいると言ったという。しかもベットの横を指しながら。

これはもう、彼に霊感があると信じざるを得なかった。これ以外にも彼は、今までにたくさんの霊的体験をしてきたという。

そんな話をしていると、ツレが今からバイトへ行くと言い出した。

ちょっと待って欲しい。確かに私はツレがバイトへ行ってる間に晩御飯を作り、バイトから帰ってきたツレと一緒にご飯を食べるためにツレの家へ訪れたが、女の人と子供の霊がいると分かったこの部屋で一人で22時まで過ごすというのか。

私は非常に怖がりなので、とてもじゃないが一人で晩御飯は作れそうにないと訴えた。するとそれを聞いた後輩が、暇なのでツレのバイトが終わるまで一緒にいてくれると言うのである。

これは助かったと思い、とりあえず後輩と共に晩御飯を作ることにした。

ツレがバイトへ行き、私たちは晩御飯の準備のためにスーパーへ向かった。この日の晩御飯は、天津飯の上に麻婆茄子をかけたオリジナルメニュー「麻婆茄子天津飯」であった。

スーパーへ行く途中、私は後輩から霊について様々な話を聞いた。中でも一番怖かったのは逆拍手というものである。

ここには描きたくないくらい、本当に怖くて恐ろしい話だったので、知らない人は是非調べて欲しいが全て自己責任でお願いしたい。触らぬ神に祟りなし程度でめちゃくちゃ簡単に説明すると、「逆のものはあの世(霊)のもの」という意味である。

 

そんなこんなでスーパーで食材を買い、女の人と子供の霊がいるというツレの家へ戻ってきた。だが横には後輩がいるので、とりあえず安心である。

早速、麻婆茄子天津飯を作り始めた。しかし私は料理があまり得意でない。先に難しそうな麻婆茄子から作ることにした。

麻婆茄子を作っている最中に米を炊いていない事に気付き、慌てて米を炊く。そうこうしている間に意外にも麻婆茄子は出来上がった。

とりあえず出来た麻婆茄子を皿に盛り付けた。次に天津飯の卵の部分を作り、上にかける天津飯のタレも一緒に作り始めた。卵は焼くだけだったのですぐに出来上がったが、新しく皿を出すのが面倒になり、麻婆茄子の上に卵を乗せた。

そしてこのタイミングで米が炊か上がったので、何のためらいもなく卵の上に乗せる。最後にタレが完成したのでタレをかけた。

ようやく完成した麻婆茄子天津飯を見てハッとした。上からタレ、ご飯、卵、麻婆茄子という順番に盛られたこの料理は麻婆茄子天津飯ではなく、逆麻婆茄子天津飯だったのである。

 

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本来は米の上に卵を乗せてタレをかけ、最後に麻婆茄子を乗せるはずだったのである。しかし逆拍手の話をしてから、この後輩が来てから、この部屋で使った料理が逆の状態で出来上がるなんて、とてもじゃないが偶然とは思えない。それに気付いてしまった時、思わず叫び声をあげたのは言うまでもない。

 

後輩にも帰ってきたツレにも必死に事情を話したが、2人ともただ料理の順番を間違えただけじゃないかとまともに取り合ってもらえなかった。ひょっとするとこれもおばけのせいかもしれない。

 

未だにツレには信じてもらえず、友人に話しても馬鹿にされる始末だが、私は実際に体験した唯一のホラー話だと思って疑わない。