親友アナスタシアについて その2

私は彼女をアナスタシアと呼び、彼女は私のことをシンデレラと呼んでいる。

なぜ我々はそんなメルヘンなあだ名なのかという理由の始まりは、私が中学2年生の冬まで遡る。

 

中学2年の冬、親戚とディズニーランドに行った。

それまで全くディズニーに興味のなかった私だが、ミートミッキーにて、ミッキーマウスに握手をしてもらった瞬間、ディズニーという存在に恋に落ちたのである。

それから私はディズニーが大好きになり、松潤が好きな傍らミッキーも大好きになった。

毎日のようにディズニー映画を漁り毎日違う映画を観つつ、同じ映画を何度も繰り返し観る日々を過ごした。最近になってツレに「レミーの美味しいレストランめっちゃ面白いよね!俺大好きやねん!」といわれ、「あれ5回くらいしか観てないけど確かに面白かった気がする」と言ったら「いや俺より観とるやんけ..」と言われたが、私はディズニー映画1本を10回は繰り返して観るような人間なので、5回では少ないのである。

ちなみにだが、ディズニーランドの着ぐるみが〜とか言う人は非常に耳障りなのでやめてほしい。思っているだけなら別に良いがわざわざ口に出さなくてもよい。それはあなたの視点では着ぐるみかもしれないが、私からすればミッキーは着ぐるみではなく立派なキャラクターだからである。

当たり前だが、ミッキーは日本はもちろん、世界に1匹しかいない。私という人間が世界で1人しかいないのと同じ原理だ。

じゃあミッキーはアメリカと日本のディズニーランドをどう行き来しているかというと、地下にエレベーターがあるので、それに乗って数分でアメリカへ行ったり日本に来たりしているのだ。地球が丸いのは、ミッキーが移動できる最適な設計をしているまでである。ちなみに中国やフランスのディズニーランドにはどうやって行っているのかについては、今のところ考え中である。

私のディズニーに対する価値観はさておき、私はいつラプンツェルになるんだろうかと思うくらいにはディズニーが好きだ。バッドエンドな映画を好む私だが、ディズニーに関しては唯一夢を見させてくれる非現実的な世界なのである。

私がディズニーを愛してやまないのは、学校の友人だけでなく、先生もみんな知っていた。私が休み時間では飽き足らず、授業中もずっとディズニーディズニーと言い、持ち物もディズニーに溢れ、プレゼンでは必ずディズニーを引っ張り出してきたからである。

うちの学校では専用の靴を履かねばならず、学校で買うことが出来た。私は履いていた上靴がボロくなったので、学校の受付的なところで買うことにした。

無事に新しい靴を購入し、新品な上靴にウキウキしながら廊下を歩いていると、仲の良い先生とすれ違った。先生に挨拶をすると、先生は「お、私さん、シンデレラやなぁ!」と言ってきた。

私は新しい靴を片手に歩いていたので、恐らく先生は靴というワードだけでシンデレラと言ったのだろう。私がディズニー好きだということも知った上でのシンデレラ発言だと思われる。

しかし、それを聞いた私はこう思った。「あ、私、シンデレラなんだ。」

私はずっとラプンツェルの卵だと思っていたけれどシンデレラだったのか、そうなのかそうなのかと1人納得し、そのまま教室までスキップしながら帰った。教室に入ると、少しだけ仲の良い友人がいたので、私はその子にこう言った。

 

「私は今日からシンデレラなんだって!だからあなたは今日からアナスタシアね!!」

友人は言った。「え〜何それ。いいよ〜」

 

 

これがアナスタシア誕生の瞬間である。

そもそもアナスタシアとは、シンデレラの義姉で、シンデレラのことをいじめまくっているダンゴ鼻をした女である。歌も下手で意地っ張りで顔も対して可愛くなく、シンデレラとは比べ様もないほどの風貌と人間性であるが、その友人は知ってか知らずか、アナスタシアになるわよと言ってくれたのだ。映画のアナスタシアとは違い心の広い奴だ。

そんなこんなで、その日から私はシンデレラと呼ばれ、私は彼女をアナスタシアと呼んだ。周りからはかなり不審がられたが、次第に周りも、私の前では彼女をアナスタシアとか呼ぶようになった。

その日から私達は確実に仲良くなったように思う。今となっては毎日LINEならぬカカオでトークしたり、電話したり頻繁に会っている。お互いの親もアナスタシアとシンデレラと呼んでいるし、親公認の仲である。

最近は、しんちゃんとかあなちゃんとか略して呼んだりするが、基本はお互いのことを「あなた」と言っている。あなたさ〜とか言うのだ。女子大生が友人のことをあなた呼ばわりするのは、見渡す限り我々しかいないように思う。

 

そんなこんなで、長くなったわりにアナスタシアの由来については少しであるが、説明できたことを喜ばしく思う。

ところで私はこの見た目と生活感から、まだ魔法にかかっていないと思われる。舞踏会にて王子さまに一目惚れされ、声をかけられてそのまま12時の鐘が鳴るまで2人きりでダンスをする日はいつであろうかと胸を踊らせている毎日である。