親友、アナスタシアについて

アナスタシアとは、高校1年生の時に出会った。

私の行っていた学校は中高一貫校であるため、ほとんどの学生がそのままなんの苦労もなく高校へ進学できる。稀に、この学校はもう勘弁だと思った5人くらいが中学卒業とともに学校を出て行き、6人くらいが高校から新しく入ってくるのだが、アナスタシアはその新しく入学した6人の内の1人であった。

初めて見たときの彼女は、正直パッとせず、背は高いが三つ編みでメガネで暗い印象であった。6人の中で一際地味なこの子とは、一生仲良く出来ないだろうなと思っていたのである。

アナスタシアとは全く絡まない日々を送り、高校2年生になった私は塾へ通い始めた。この時、同じ塾に通っていた、ちびまる子ちゃんのミギワさんみたいな顔の友人がいた。ミギワさんみたいな子とは高校も同じであったが、塾がきっかけで仲良くなるようになった。

そんなある日、ミギワさんがアナスタシアを連れて塾へやってきた。どうやらアナスタシアも今日から塾へ通うらしい。

よりによってアナスタシアか、なんて思ってしまったが、これから3人で一緒に過ごすことになるかも知れない。アナスタシアと打ち解ける気がしなかったが、表面上は仲良くしておこうと思った。

月日が流れ、意外にも厄介な存在になってきたのがミギワさんである。ミギワさんは、表面上の付き合いであればそうでもないのだが、深く関わればひとたび面倒くさい性格であることを知った。ミギワさんは、理系でもないのに理系ぶり、私より勉強はできないのに、こんなのも分からないのかと上から目線で私に嫌味ばかり言ってくるようになったのだ。

また私達が通っていた塾の先生は、みな大学生で年も近かった。なので、かっこいい大学生のお兄さん的存在な先生がわんさかいたのである。女子校に通っていた私は、若い男の人と関わるのが非常に新鮮であった。

ミギワさんも同じだったらしく、たくさんのお気に入りの先生がいた。しかし、私がミギワさんのお気に入りの先生と話そうもんなら、彼女から嫉妬の目が向けられた。その嫉妬の目に気付かないわけもなく、2人の間には、だんだんと不穏な空気が漂うようになっていった。

しかも、私は匂いフェチなのだが、ミギワさんはなぜか口臭がキツく、あまり一緒にはいたくなかった。それは私以外の友人達も口を揃えて、ミギワさんの口はクサイと言っていた。ミギワさんと話す際、無意識に嫌な顔をしてしまっていて、更に関係が悪くなっていった事も考えられる。

更に言うと、私は重度の潔癖症である。彼女はよく、自分の鼻をつまむ癖があった。それだけなら別に良いのだが、その鼻をつまんだ手で色んな物を触るのだから、私は嫌で嫌で仕方なかった。

ある日、私は英検2級を受け、無事合格することが出来た。あまりの嬉しさに、その点数が書かれた紙と合格通知を持ってウキウキしながら塾へ行くと、あのミギワさんが待ち構えていた。そして彼女は自分の鼻をつまんだかと思うと、私が持っていた英検の書類をさっと奪い、まじまじと見始めたのである。

この時の私の気分は最悪であった。そもそもその書類等はお前に見せに来たのではない。お世話になっている塾の先生に1番に見てもらいたかったのだ。なのに、私の許可すら取らずに鼻をつまんだ指で私の書類を持ち、あーだこーだと言っているのである。

私の記念品はミギワの鼻の脂付きで返された。私の心の中は土砂降りの大雨であった。もはやハリケーンが来ていたかも知れない。

そんなこんなで、私はミギワのことが嫌いになり、アナスタシアと一緒に過ごすようになった。ミギワの被害は私にしか被っていなかったが、今までの一連の騒動をアナスタシアも見てきており、既に彼女は私の味方についてくれていた。

私がミギワにどんな嫌味を言われようと、いつ何時もアナスタシアは私の側にいて、静かな安心感があったのだ。いつの間にか彼女は、私にとって非常に心強い存在となっていたのである。

 

ところで、なぜアナスタシアは本名なのかと言うと当たり前だがそうではない。彼女は至って普通の名前である。

その辺の説明は、後日話そうと思う。