薬学生だが薬剤師になりたくない話

薬学部に通っている私だが、薬剤師の仕事にまるで興味がない。白衣を着て薬を作り、患者さんに服薬指導するといった、薬剤師らしい仕事をしたくないのである。

 

なぜ薬学部に入ったのだと責められそうだが、元々は給料が良い仕事として薬剤師という職業を知った。確か12歳くらいの頃だったと思う。

給料の良さに飛びつくなんて、12歳の頃から金に飢えているような性格だったのかと言われればそうでもないのだが、小学生だとむしろ、給料がいい仕事のみに魅力的に感じるのかも知れない。薬剤師がどんなことをする仕事かは知らないが、給料が良いからという理由で薬剤師を志望し、そのまま大学受験期を迎えてしまったので、なんとなく薬学部に来たという成り行きである。

そんな感じで大学に来たので、勉強がまるで面白くない。これを学んで将来何に使えるのだという内容ばかり勉強している気がする。高校の時に、将来絶対使わないような漢文を習わされているのと全く同じ状況なのである。

当然ながら成績も常に下から一桁をキープしているが、あまり気にしていなかった。国家試験が近づいてきて、今更になって一桁の成績が気がかりになってきてたが、既に遅い。

そもそも私は、薬剤師の仕事に興味がないのだ。私は白衣よりもスーツを着て、オフィスでパソコンをカタカタさせ、上司にペコペコして金を稼ぐOLになりたいのである。

しかし、薬学部に来たことを今更悔やんでも仕方ない。6年間という年月と、この大学に振り込んだ大金は返ってこない。学費に関しても色々と不満はあるのだが、ここで語ると話がズレるので今回は省略する。

ではなぜ私は、漠然とOLになりたいと思っているのか考えたところ、親の影響だと気付いた。

 

私の父親は、自分で言うのもなんだが優秀なサラリーマンだと思う。サラリーマンというか、多分世の中でいう官僚の仕事をしているのだが、その出世ぶりと効率の良さが嫉妬しても良いレベルで優れている。

トンビが鷹を産むということわざがあるのなら、鷹がトンビを産むということわざがあっても良いだろう。この優秀な遺伝子が、なぜ私の細胞内へ引き継がれなかったのかと非常に悔やまれる。私を形成しているはずの遺伝子は、形成中に一体何の仕事をしていたのだと聞きたいところだ。

 

父親が毎日バリバリ働き稼いでくる姿を見て、無意識に憧れを抱いてきたのかもしれない。将来は病院や薬局などではなく、会社で働く傍らエッセイストとして文を書くことが出来ればいいなとぼんやり思う日々である。