高校生の頃の話

私は人よりおぼこい高校生時代を過ごしていた。オシャレや流行りのものはついていけないかったし、性に関する知識も遅れていたと思う。高校2年生くらいまでキスをすれば妊娠すると思っていたので、高校生の頃に彼氏がいなかったのは不幸中の幸いとも言える。

今となってはアウトドア派で、家にいない日の方が多いが、高校生の頃は電車に一人で乗ったことがないほど、家に引きこもる毎日だった。たまに友達の家に遊びに行っても、16時には家に帰るほど安全に徹した日々を過ごしていた。

高校生が遊びに行くと言えば、街に出て映画やカラオケに行ったり、プリクラを撮ったりするのかもしれないが、当時の私にそんなマセた遊びは思いつかず、ひたすら友人の家に行っていた。友人の家に行って何をしていたかというと、お菓子を食べながら嵐の番組を見たり、飼っている犬を撫でたり、平井堅のPVを鑑賞していた。

ある日、親友の家に行くと、金髪のウィッグがあった。なかなか面白そうなアイテムが置いてあったので、何の迷いもなく被ってみた。

誰がどう見ても似合っていなかったが、なぜか気に入ってしまった。そこで、サングラスをかけ、外人っぽい格好をしようとシャカシャカのジャージを身に纏った。なぜ外人といえばシャカシャカジャージだったのか不思議でならないが、当時自分の中で流行っていたシークレットアイドルハンナモンタナを意識していた。普段は普通の芋臭い高校生だが、ひとたびウィッグを被るとステージで歌って踊るハンナモンタナに変身したような気分であった。ちなみにハンナモンタナはジャージを着ていないし、普段は芋臭い高校生でもない。同じなのは金髪のウィッグを被っているということのみだ。

これで満足してウィッグを外せば良かったのだが、なぜか私と親友は、この姿を誰かに見せたくなってしまった。そこで、私の顔が隠れるように写真を撮り、キャサリンという留学生がホームステイに来たという設定で、親友により私の無様な写真は友人のケータイへとばらまかれた。みんなどんな反応をするのかとワクワクしていたが、当然のようにすぐ私であるとバレた。実に面白くない気分である。騙されるおめでたい友人などいるはずないかと諦めていたところ、学年1の不思議ちゃんだけが、キャサリンすごいねと返事が来たのだ。

私たちは喜び、キャサリンがホームステイにきた経緯や性格など、細かい設定を教えた。不思議ちゃんは私たちを信じきった様子で返事をくれたが、途中で飽きたのであっさりネタバラシをした。罪悪感などなく自己満で騙し続けたところが女子高生の残酷な面かもしれない。

大学になってからはキャサリンになることもなく、ごく普通の大学生として過ごしている。カラオケではいきものがかりを歌ったり、映画館でボスベイビーを見て子供が欲しくなったりと、ようやく女子大生らしい遊びが出来るようになったのかもしれない。

しかし、キャサリンになったあの日は、忘れもしないほど楽しい出来事であった。もしも、私たち以外でキャサリンなりきりごっこをしたい女子高生がいれば、すぐさま飛んでいきウィッグを渡したいものである。