馬鹿だった女子校生の頃の話

高校生とは馬鹿な生き物だと思う。

なぜそう思うかと言うと、私が典型的な例だからである。私と、当時の周りの友人は今思い出しても言い訳の仕様がない程馬鹿であった。

私は女子校に通っていたが、女子校の生徒にとって、彼氏は芸能人であった。芸能人が彼氏、と言った方が良いかもしれない。私の周りは、嵐を彼氏にしている人が多かった。そして紛れもなく、私もその人たちの一員であった。

私は松潤が好きだった。なぜ松潤が好きだったかというと、本当はニノが好きだったのだが、ニノのファンの友人が既にいた。

ここで女子校の恐ろしいところが、先にファンになった人と同じアイドルを好きになると、裏でめちゃくちゃ悪口を言われて叩かれるという暗黙の了解があった。なので私は、仕方なく誰もファンがいなかった残り物の松潤のファンを演じていた。つまり、女子校でジャニーズファンになるには余程の覚悟がいるという事を知っていただきたい。

話は戻り、アイドルや芸能人を彼氏にしていた女子校時代だが、彼氏ならメールが届いて然るべきものである。しかし、当然ながら松潤やニノからのメールなど、我々凡人のケータイに届くはずもない。しかし、彼氏である以上メールは送って欲しい。ではどうしていたかというと、自分達で作っていた。

昔少し流行ったが、芸能人の写真を背景にしたメール画像みたいなやつを、あたかも自分だけに届いたかのように文章を打つのだ。好きな芸能人からの自分宛のメールを自分で作成するなんて、本当に馬鹿馬鹿しいしかなり虚しいが、そんな現実には目を背け、友人達は皆必死に作っていた。

その内容もかなりぶっ飛んでいた。キスすれば妊娠すると思っていた自分には書けないものばかりだった。あまり覚えていないが、『○○へ。明日は△△水族館でデートだな!手繋いで写真撮って、たくさんハグして、家に帰ったら....な?❤️翔より』といった、今思い出しても痛い文を、画面いっぱいに打っていたのだから恐ろしい。嵐からしても飛んだ迷惑である。なぜ友人の打ったメールを知っているかと言うと、友人達は自分の妄想だけで完成したメールを、周りに見せて自慢する習慣があった。

「見て〜!!翔ちゃんからこんなメール来たんだけどやばくない!?!?❤️」

来てねぇよ、の一言に尽きる。自分で勝手に作って勝手に興奮してやばいのはお前の頭だと内心貶していた。

そしてついに、私もそのメールを作成しなければならない時が来た。嵐ファンの友人達に、松潤からのメールを見せろと言われたのだ。周りからのプレッシャーや威圧感が怖く、渋々作ることになった。

しかし、当たり前だが、一度も会ったことのない松潤からのメールを作るのは、案外難しいものだった。そもそも私は芋臭いのだから、こういうのは苦手なのである。妄想内でデートしたり、いちゃいちゃしたりと、思春期らしい事を全く考えることが出来ないのだ。友人達が、妄想だけであそこまでのクオリティのメールを作れるのは、もはやセンスだと思った。

結局松潤からは、『勉強大変だと思うけど、頑張ってね。君のこと、ちょっと気になるからさ』とだけ来た。

勉強頑張れよくらい、わざわざ彼氏じゃなくても、なんなら親に言われるような台詞だ。それに、友人の彼氏は『愛してるよ』とか『大好きだよ』とか、付き合ってるのか付き合ってないのか知らないが、愛の言葉をたくさん送っていたのに、それに比べて私の彼氏は、せいぜい『気になってるよ』程度だった。少し寂しい気もするが、松潤から、愛してるよなんて来られても困惑するだけなので仕方がない。私はその程度しか妄想出来なかったのだ。

後日、友人達に精一杯作ったメールを見せたが、逆に気持ち悪がられた。彼女達は、毎回メールの最後でベットインしているくらいなので、まぁ当然のリアクションだと言える。私以外の女子校生の妄想は無限の可能性を秘めていると思った。

 

最近になって、この話をツレにした。ここで思ったのだが、高校の時にしていたようなメール、つまり、今の本当の彼氏から来て欲しいメールを、今の私が作るとどうなるのだろうと思った。

しかし、どう考えてもなかなか気持ち悪い気がする。ツレからこんなメールが来て欲しいな、と妄想しながら自分宛にメールを打つのは、ツレ本人も複雑であろう。

それをツレに言ったところ、「そんなことしなくても、打って欲しいメールあれば俺打つよ?」と言われ、即解決した。こちらから頼んで、本人に送ってもらえばよいのだ。直接好きな人からメールが届く幸せを、今更ながら実感しつつ、まだ女子校生気分が抜けてないのかもしれない、と思ったのだった。