金縛りにあった話

久々に金縛りにあった。

2人の赤ちゃんが私の両耳にへばりついて大声で一生泣いていた。私は動けず、ひたすらその泣き声を受け入れていた。

金縛りは、霊的な物でもなんでもなく、脳は起きているが体は寝ている状態で起こるものだ。また二度寝したり、疲れたりしていると起こるので、金縛りにあったら『あぁ疲れているんだな』と思っていれば問題ない。

私の長き金縛りとの戦いは、ある日突然勃発した。そもそも母親が金縛り体質らしく、金縛りは遺伝することを知った。寝ていると体が動かなくなって手のようなものが見えると母親に聞いた時は、なんと恐ろしいものかと思っていたが、その半年後に同じ事が身に起こってしまった。

寝ていると、急に目が覚めた。そして、何故か体が動かず、助けを呼びたくても声が出せない。すると、目の前に黒い手が私の顔に現れた。

これが金縛りか!!と思った。とても怖い気持ちでいっぱいになり、頑張って動こうとしたり、声を出そうとしても全く出せなかった。本当に恐ろしい初体験だったと言える。

しかし、4回目ともなると慣れたものだった。突然目が覚め、体が動かなくなっていることを確認すると『あぁ、また来たんだな』と思い、ひたすらじっとする。体が動くようになるその時をひたすら待つのだ。そうすれば、この苦しみから必ず解放されるからである。

その頃になると、ドア付近に女の人の姿が見えたり、寝ているはずなのに後ろから背中を叩かれたり、空飛ぶビニール袋に襲われそうになることもあったが、別に恐怖心は無くなっていた。また、呼吸が苦しくなって息が出来ないようになったが、それもしばらくすれば元に戻るので、特に気にしていなかった。

数多くの金縛りを経験してきたが、一番印象的だったのは、力士に足つぼマッサージをされたあの一夜である。

ある晩、寝ていると、夢の中で力士が現れ、私の足の裏をマッサージし始めた。頼んだ覚えはないのだが、私は台に寝転んでくつろいでいるし、力士も張り切ってマッサージしてくれているので、特に断る理由もない。リラックスした状態でそのまま我が身を任せていると、力士がありえない力で私の足の裏をグイグイ押してきた。

それはもう、悶絶するほどの痛さであった。あの筋肉と脂肪に包まれた力士が思いっきり押しているのだから、痛くないわけがない。あまりの痛さに叫びそうになったその瞬間、目が覚めて金縛りが起こった。

全くタイミングの悪い金縛りである。金縛りのお陰で、体が動かせないどころか、足の痛みまで金縛りにあい、痛みが全く引かないという謎の状況が起こった。

足が痛いし、体が動かせないし、声も出せない。息もだんだん苦しくなってくる。絶対絶命とはこのことである。足の裏の痛みに耐えかねたその時、私の両側に、突如白玉が現れ、『イターイ!イターイ!』と連呼し始めたのだ。

 

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全く意味が分からない。力士とは何の関連もない白玉の登場に、一瞬痛みを忘れるほどである。しかもめちゃくちゃ高い声で、よく見ると顔も可愛い。痛みと戦っていたはずだが、白玉ちゃん達のイターイコールに少し癒されてしまった。

そのまま目が覚めたが、足の痛みは消えていた。更には白玉ちゃん達の姿も消えていた。忽然と現れたあの白玉ちゃんは何だったのだろうか。また私が金縛りにあった際は、ぜひ応援に来て欲しいと今でも思うのだった。